Take your Time,Take your Life

クラシックギター、ソロギター、カメラ、音楽、映画がすきです。

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クラシック・ギタリスト 小暮浩史さんのニューアルバム『oblivion』を聞く

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何度か演奏会を主催させていただいた、クラシックギタリスト小暮浩史(こぐれひろし)さんの2枚目のアルバム『oblivion』が発売されました。昨年の2017年には東京国際ギターコンクールで久々の邦人優勝を飾り、いまもっとも勢いに乗っているギタリストの一人です。

 

今回のアルバム、まったく前情報なしで開封したところ、1曲目にローラン・ディアンス編ピアソラの『リベルタンゴ』が収録されていました。演奏会などでも聞いた記憶がなかったのでまずビックリ。

ピアソラの曲のギター独奏ですと『アディオス・ノニーノ』『チキリン・デ・バチン』『天使の死』『オブリビオン』『ブエノスアイレスの春・夏・秋・冬』あたりがよく弾かれていますが、おそらく一般的には一番有名な『リベルタンゴ』は他のギタリストの演奏会でも聞いたことがなかった気がします。

聞いてみるとイントロは耳に慣れ親しんだ『リベルタンゴ』とはまったく違った曲相で、クラシックギターの複雑な技巧のオンパレードのような難曲でした。

『A列車で行こう』から『チュニジアの夜』まで、ギター1本でジャススタンダードの国へもひょいっと越境してしまうディアンス。タンゴだろうがなんだろうが、エンターテイメント、あるいはアートに昇華してしまう、ローラン御大の真骨頂といったところでしょうか。

 

小暮さんの演奏をきく時に思うのが、この「エンターテイメントとアート」の2つのバランスの良さです。クラシックギターというのは、どちらかといえばアートの領域に引っ張られがちで、超高度な技巧や芸術性の高さというか、ともすれば堅苦しい雰囲気をまといがちな世界に感じます。

その中で小暮さんの演奏は常に根底にエンターテイメント魂が流れていて、独特のグルーブというかポップさがあって、今風に言えば「いいバイブスだしてる」感じなのです。ブローウェル編のピアソラ『天使の死』を得意としていた小暮さんですが、『リベルタンゴ』を演奏会で聞くのも楽しみです。

 

 

 ニューアルバムの聞きどころはたくさんあるのですが、数回聞いたいまの時点で特にお気に入りなのが、ロベール・ド・ヴィゼーの『組曲ト長調』です。

ギターで留学してリュートなどの古楽器を勉強するギタリストがいると聞きますが、小暮さんもその一人で、テオルボ(リュート属の楽器でネックがとても長いやつ)を学んでいるそうです。

ロベール・ド・ヴィゼーは17世紀のフランスで活躍したギターとテオルボの名手といわれています。クラシックのメジャー作曲家の中に置かれると目立たない存在かもしれませんが、クラシックギター界の中では有名な作曲家で、ルイ14世の宮廷音楽家をしていました。(詳細は謎に包まれた人らしいです)

ルイ14世といえばブルボン王朝イケイケ時代を作った人かつ、ダンスパーティ好きな元祖パリピ。ド・ヴィゼーはその太陽王に音楽を捧げていたというのですから、今でいえばワールドクラスのミュージシャンだったのかもしれません。

ライナーノーツによると、ド・ヴィゼーが遺した「テオルボとリュートのための曲集」と「セズネ手稿譜」の2つの版をもとに小暮さん自身がギター独奏用にアレンジしたもので、もともと通奏低音(要は今でいうところのベース音)を弾くテオルボを表すためにギターの5,6弦をかなり低くチューニングしています。

ゆったりしたプレリュードから始まるバロック時代の音楽。低音がとても心地よく、天気の良い11月の休日の朝になど聞いていると、なんだか自分の人生が豊かになった気がしてきます。洗濯ものもよく乾きそうです。

 

 

そして、もう1曲だけ挙げるとするならばセルジオ・アサドの『南米風変奏曲』でしょうか。こちらは2年前のアントニー国際ギターコンクールの課題曲として作曲された新しい曲で、このCDが世界初録音ということです。

小暮さんはこのコンクールに参加し、作曲家本人の前で演奏し、課題曲を最も優れて演奏したものに贈られる「課題曲賞」をアサド本人からいただいたそうです。いま録音を残すとしたら、小暮さんをおいてほかにはいないといったところでしょうか。

こちらはクラシックギターを弾く人ならば誰でも知っている、フェルナンド・ソルのエチュード(練習曲)から始まります。「夢」という名前が付けられ、ギター愛好会にも愛奏されるシンプルで美しい曲です。

『南米風変奏曲』は、クラシックの変奏曲によくある、素人にはどこがどう変奏されていっているのかよくわからない曲と違って、このエチュードがかなり原型をとどめたままに様々な南米の民俗舞曲に変奏されていきます。

アサドらしい洒脱で軽妙な曲で、耳になじみやすく、クラシックギターを聞いたことがない人は、こういう曲から聞いたら楽しめるんじゃないかなという1曲です。これからいろんな演奏家が弾いていくようになるかもしれません。

 

もっといろいろと書きたいのですが、どんどん長くなってしまうのでこのへんで。

 

さて、そんな2枚目のアルバムを出したばかりの小暮さんですが、昨年の東京国際ギターコンクールの優勝記念で全国ツアーの真っ最中です。

クラシックギターを初めて聞かれる方も、愛好家の方もきっと楽しめると思いますので、お時間ありましたらぜひ足を運んでみてください!

 

北区に来たらエレカシの曲が赤羽駅の駅メロに使われることに

 

 

作月末、10年以上住んだ板橋区大山をあとにして新生活を始めました。大山の雰囲気がとても好きなので、また遊びに来られるように近辺で探していたところ、板橋駅の近所に良い物件が見つかり、あまり熟考もしないうちに引っ越し。

 この地域、JR板橋駅のすぐそばなのですが、なんと北区です。(ちなみに板橋駅のホームの大部分は豊島区だそうです)駅あるあるというか、区名を冠した駅が区境に位置しているというやつでした。新宿駅がほとんど渋谷区にあったりするのと同じですね。

転出届を出しに赤羽に行き、みやじの住んでたエリアが生活圏になるのだなとしみじみと思いました。また春ごろに山田孝之の『北区赤羽』にドハマりしていたので、なにか吸い寄せられるものがあったのかもしれません。

そんなところへ嬉しいニュースが!

www.oricon.co.jp

 

うおー!マジか!マジなのか!

 

orenomichi.hateblo.jp

 よく読ませてもらっているエレカシファンブログ『俺の道』のエイプリルフールネタを思わず思い出しましたが、今度はガチのようです。本当に嘘から誠というか。いずれにしても嬉しい。

 

僕の地元はZARD坂井泉水さん出身中学の最寄り駅があるところで、「負けないで」と「揺れる想い」が駅メロとして用いられるようになりました。(僕は隣の中学に通っていました)

昔バイトしてたときの後輩くんがZARDの熱狂的なファンで、僕の地元を聖地として何度も巡礼していたことを懐かしく思い出したりもしました。当時はミュージシャンのファンになって、その生誕地を訪れたりすることに何の意味があるのか分かりませんでしたが、今では少しわかるようになった気がします。

 

Mステの椎名林檎とのコラボパフォーマンスもぶっ飛んでて気持ちよかったー!11/16はファンがたくさん赤羽駅に集まるのでしょうか。仕事帰りに足を延ばして寄れたら寄ってみたいと思います。

 

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(赤羽台団地にて。Nikon FM3A / Ai Nikkor 45mm F2.8P/Kodak Portra400)

ポール・マッカートニー Freshen Up Japan Tour 2018.11.1東京ドーム

「Outhere」「One on One」に続き、今年も行ってきましたポールの日本公演。今回は奮発してS席をゲット。もちろん昨年のような奇跡は起きませんでしたが、けっこう近く感じられる席で、しかも両サイドが空いていたので腕を振り上げたりもしやすく、立ちっぱなしで楽しんできました。下記は前回のツアーでの奇跡の詳細です。

 

kentarot.hatenablog.com

 

今回は全米チャートで1位を獲得した『エジプトステーション』を引っ提げてのツアー。僕もひと月ほど前に初回限定版をゲットしてちょこちょこ聞いてからの参加でした。

 

 

ちょうど二日前に奇妙礼太郎さんとトモフスキーの対バンを聞きに行って、そのとき礼太郎さんがいっていたのですが、「もうポールクラスになると曲名が"I Don't Know”とか"Do it now"みたいなシンプルなのでなんとかなってしまうのがすごい」という話をしていました。

なんとなく言いたいことがわかります。キャリアのないミュージシャンがそういったタイトルをつけるのと、ポールがつけるのは言葉の重みが違うというか。マーチン・ルーサー・キングが"I have a dream”という時と僕らのような凡俗がそれを言う時とは意味合いすら変わってくるというか。ポールがいう"Do it now"はどこか哲学的な意味すらあるんじゃないかと感じてしまいます。

 

さて、ライブ。セットリストは前のツアーとも前の前のツアーともかぶっています。ちょっと例えとしてあっているかどうかわかりませんが、約束事はある程度までは決まっているミュージカルや演劇に近いライブといえるかもしれません。

もちろん初めてくる方は、新曲よりは知っている有名曲をやってほしいと思っているだろうし、僕もポールを聞くからにはレリビー、ヘイジュード、ブラックバードあたりはどうしてもききたい。

そしてゴールデンスランバーも、アイブガッタフィーリンも、オブラディオブラダも…と、オーディエンスの「これはどうしても聞きたい」というのの最大公約数的なセットリストを組んでいくと、今のような選曲になるのだなあと思うわけです。

今回は新しくホーンセクションの3人も加わって、アリーナ席中央を吹き歩くという演出が加わっていました。アリーナ席にポールが下りるのはセキュリティ的にもなかなか厳しいでしょうが、花道を作ってセンターに出てきてくれたりしないかなーと本気で思いました。海外のミュージシャンはあんまりやらないでしょうが。次のツアーではぜひ検討してほしいものです。

今回面白かったのはエリナリグビーの歌いだしでコーラスをミスってやり直しという一幕。そのときのポールのとっさのひとこと"Proove it's live"(ほら、これがライブだって分かったでしょ)。会場は爆笑でした。なんかこういう場にいられるだけでもうれしいものです。

三列前に座っていたおじ様がずっと座って聞いていたけれど、アンコールでは立ち上がって大はしゃぎしていたのがとっても良かったです。なんだか音楽って本当にすごい。

ポールも今年で御年76歳。すこし心配だったのが昨年のツアー時より老けた、というかすこし元気がないように感じられたことです。年齢的なことを考えればあれだけのライブをやり続けているだけでも「存在自体が奇跡」みたいな人ですが。できるだけ長くそのレジェンドを見せてほしいものです。

 

 

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Born in The '60s

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60年代に生まれた人の影響が大きいな、と最近ふとした折に感じます。父親でも母親でも無く、同年代でもなく、年の離れたアニキたち、あるいはアネゴたち。干支で言うと一回り上の人々。還暦のチョイ手前のアラ還世代というか。

取引先や大好きなミュージシャンでも、この世代の人々は言ってみれば「酸いも甘いも味わって来た世代」。バブル世代といえばバブル世代だが、諭吉をちらつかせてタクシーを止めていたタイプの人でもない(ホントにそんな人いたのか?)。

社内政治に巻き込まれて、「じゃあそういことなら俺は独立させてもらうよ」と20年働いた職場を後にする人。数十人の従業員を抱えながら、やむなく会社を閉じてしまった人。ずっとオモテ舞台にでることなく実直にプロフェッショナルとしての道を究めて、今日に至って脚光を浴びるようになった人…。

 

打ち合わせや飲み会などでそういった方々の話を聞くと、ひとことひとことに重みがあります。魂が入っているというか、血が通っているというか。

昨今の若い起業家や、インフルエンサーとは対極に位置する人々かもしれない…。それでもなんだか、人として、仕事をする人間として当たり前のことを言っている言葉になんだか重みを感じざるを得ないのです。

「知に働けば角が立つ,情に棹させば流される」まさにこのことを体現してる方々にお会いして、その一言に耳を傾けると、ある種ステレオタイプな言葉も箴言として聞こえてくるのです。

あるいはそれは関係性のもたらすマジックかもしれない。でもそういったマジックが起こりうる状況は、マジックが起こらない状況よりも何か創造的な、あるいは生産的な気がしてしまう。

これは音楽などでも顕著で、同世代のミュージシャンよりも10歳くらい上のミュージシャンい惹かれるのって割とあることではないかと思います。僕の例でいえば、コレクターズやピーズ、あるいはエレカシ

あの永遠に続くかと思われたアドレッセンスのちょっと先を生きていた世代。さきほどアニキ、アネゴたちと書いたけれど、ひょっとしたらもう少し上の世代。両親と兄弟のちょうど間くらいの人々。

こういった人々を直接的であれ、間接的であれ、ある種のメンターとして持てることは、実はとんでもない僥倖なのではないかと時々思うのです。

このことをうまく言える言葉が欲しいです。「干支ひとまわり上リスペクト」的な。

 

いきなり最前列!?「ポール・マッカートニー One on One Japan Tour 東京ドーム公演」の奇跡

今年もポールが!

 

ポールが今年も来日してくれるとのことで、さっそくチケットをゲットしました。今回のワールドツアーは「Freshen Up」。11/1の東京ドームが待ち遠しい日々が続いています。

前回のツアーからは1年ちょっと。高齢にもかかわらず、ハイペースで来日してくれるポール。本当にあの体のどこにそんなエネルギーがあるのかと不思議に思います。

 

One on One Japan Tour 東京ドームでおきたこと

 

ここに書き残すのは2017年4月27日に、僕にとつぜん訪れた奇跡のような出来事についてです。何かの時に振り返って読めたらと思い、書き残しておくことにしました。

 

2015年の「Out There Japan Tour」から2年ぶりにポールが来日しました。「One on One Japan Tour」もなんとか2階席の一番後ろの方のシートを手に入れられたので、仕事を早退して東京ドームに向かいました。

 

少し肌寒かったですが、ドーム前には日本中(世界中?)からオーディエンスが集い、グッズ販売はとんでもない長蛇の列。お手製のポールのお面をかぶった人がいたり、サージェントペパーズのコスプレをしている人もいたりして最高の雰囲気。

 

一緒に行った彼女はMACCAキャップに、Out There Tシャツ(ユニオンジャックヴァージョン)、手にはOne on Oneのトートバッグとバッチリな体勢。僕もThe Beatlesの4人が一筆書きで刺繍されたTシャツを着て腹ごしらえをしました。

 

 2枚のチケット

 

手荷物検査を終えて、チケットをモギられ、ドームの中へ。最後方の席にむかうため、4階まで階段を上がって、トイレを済ませて入場ゲートに向かおうとしていた時のことです。

 

とつぜんひとりの男性スタッフに「少し質問したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」と呼び止められました。彼の後ろにはとても上品な外国人スタッフらしき女性がいました。何かの取材のようなものだろうかと思い、立ち止まりました。

 

「ポールのことは好きですか?」と質問されたので、もちろん好きですし、ビートルズも好きですと答えました。「ライブに行ったことはありますか?」と聞かれたので、2年前(Out There 時)もここに来ました。と答えました。

 

男性スタッフが僕たちの返答を女性に通訳して、ふたりはしばらく顔を見合わせ、女性が男性に何かを言い、そのあと男性スタッフが「あなたたちにポールからプレゼントがあります」といって、僕たちにチケットを差し出してくれたのです。

 

 

 

 

 

それはなんと2枚のアリーナのチケットでした。

 

一瞬なんのことか分かりませんでした。ふたりとも身なりもとても洗練されていて、スタッフのパスも首から下げていますが、あまりにいきなりのことにビックリしてしまって、喜ぶと同時に、「こ、これは何かの詐欺みたいなやつなのか?」と少し不安になりました。

 

そんな僕の様子を見て、女性スタッフが「心配しないで、私はポールのアシスタントで、これは本当のことよ。ほらスタッフパスも持っているでしょ?いま手にもっているこの無線機もちゃんとポールに繋がるわよ」とパスと無線機を見せていいました。本当だということをしめすために無線機にむかって「ポール!」と冗談で話しかけていました。

 

通訳をしていてくれた男性スタッフは「疑うのも無理のないことですが、本当のことですよ」と微笑んで安心させるように言ってくれました。それでもビビリな僕は、念のため自分が持っているチケットを写真に撮り(なにかトラブルが起きたときの助けになるかもと思ったのです)、チケットを彼女らがもっていたものと引き換えてもらいました。

 

「こういったサプライズをポールはいつも考えていて、あなたたちのような方にプレゼントしているのです。ペアになってますので、おふたりで楽しんできてください」と男性スタッフはにっこりと話し、アリーナ席への道順を教えてくれました。

 

 アリーナへ

 

なんだか狐につままれたような気持ちで、でもとにかくお礼を言って二人と別れ、男性スタッフが教えてくれた通路を歩き、階段を下りてアリーナ席に向かいました。正直なところ、歩いてるときも「こんなうまい話があるのだろうか?」「ニセモノだったらどうしよう」と疑念がぬぐえないままでした。

 

2年前も2階席のほぼいちばん後ろで、もちろんドームのアリーナ席など行ったことありません。長い通路を歩き、たくさんの座席の間をぬけて、アリーナ席にたどりつきました。下から見上げるドームは本当に巨大で、ここがいまから満員になったらどんなのことになってしまうのか、どこか現実感を欠いた光景でした。

 

チケットには「Aブロック」との記載がされていて、開演時間も近づいてきているので、とにかくそこを目指しました。なにしろアリーナ席のAブロックがどのあたりなのかも全然知識が無いので、ブロック表示を見ながら探し歩きました。

 

 

そして、われわれを待っていたのは、

 

 

なんと一番前のブロックなのでした。

 

「ホントに?」「すごーい!」と喜ぶわれわれ。

 

今度は座席探しです。アリーナ席は膨大な数の折り畳み椅子からなっていて、それぞれの背もたれには席番が書かれたシールが貼ってありました。チケットに記載されている席番の椅子を探していったわれわれを待っていたのは、

 

 

 

 

 

なんと最前列中央部の席でした。

 

 

目の前にはステージと客席をへだてるフェンスがありました。「え!?ホントに!?ホントにここなの?」「どーしよ!どーしよ!」と何度も座席の番号とチケットの席番を確認して、さらに心配なので近くのスタッフにも確認してもらいました。間違いないとのことでした。

 

 

本当に本当なんだ。

 

急に心臓がバクバクして体がフワフワしてきます。

 

ポールのライブを最前列で聞けるなんて!

 

しかも東京ドームで!

 

 

 

もう訳が分からない興奮で体が震えました。本当に僕らがここにいていいんだろうか?開演時間までずっとソワソワして立ったり座ったりの繰り返しです。まわりにはあまり芸能界に明るくない僕でも知っている、芸能人やミュージシャンの姿もありました。

 

 

 

いよいよその時が

 

ポールとバンドメンバーたちが登場してオープニングナンバーの「A Hard day's night」が始まります。

 

ポールが目の前に!

 

近い!


どのフレットを押さえているかまで見える!


いま絶対僕を見ている!

 

もうなにがなにやらです。(実際見てなくても心の目で見られてるのです)

 

 

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(なんと撮影可能でした!)

 

ベース、エレキギターアコースティックギター、ピアノ、ウクレレ…次々に楽器を持ち替えて演奏し、時にシャウトし、時に日本語でしゃべり、時にユーモラスにお尻を振り、時にジョークを飛ばしてオーディエンスを笑わせようとするポールの姿が目の前にありました。

 

巨大なドームではどうしても音のラグがありますが、僕らのいるところにはバンドが演奏している音がダイレクトに響いてきたのにも感激しました。カッティングや足を踏み鳴らす音が、そのまま生で聞こえてきます。ソリッドなバンドサウンドに体が勝手に反応し、その音の美しさと密度に圧倒されました。

 

 偉大さとは

ポールはもちろんスーパースターで、ある種のアイドルでもあり、まちがいなく20世紀以降の世界最高峰のミュージシャンの一人です。多くのフォロワーを産み、その後の音楽に多大な影響を与え、多くの人の人生を変えてきました。まさに生きるレジェンド、今後の音楽史にも残り続ける、「偉大な」アーティストです。

 

でも一方で僕の目には、ポールにとっては、そんな「偉大さ」とは無縁な存在にも見えました。

 

間近で見るポールは、バンドメンバーといっしょにお客さんを楽しませよう、丁寧なコンサートをしよう、いい音楽を届けようと、ひたむきに歌い、演奏するひとりのシンガー/プレイヤーであり、みんなを笑わせよう、ハッピーにしよう、そして自分が受け取ってきた何か大切なことを伝えようとしているひとりの人間でした。

 

その姿に本当に心を打たれました。

なんというか、「本当の『偉大さ』というのはこういうことなのだな」と魂が震えるのを感じました。

 

 

音楽とポールの一挙手一投足にもりあがる東京ドーム。僕もほかのお客さんたちといっしょに飛び跳ね、こぶしを突き上げ、頭を振り、手を振り、手をたたき、カラダをゆすり、足踏みし、聞き入り、歌い、笑い、涙し、ポールの名前を声をからして叫びました。こんな時間がずっと続いたらと本当に思いました。

 

 

 

 

でもやがて、最後の音が鳴り終わり、紙吹雪が降り注いできました。

 

演奏時間はアンコールふくめて150分超。曲数は39曲。水も飲まず、ほとんど休まず、最後まで一切の手抜きナシで世界最高峰の音楽を届けてくれました。年齢は74歳。いったいどこからそんなエネルギーが湧いてくるのでしょうか。

 

 

 

夢のような、おとぎ話に迷い込んだような時間でした。何か大きなものに触れたと感じる時間でした。

圧倒的な体験の余韻に包まれて、呆けたようになった心身。なんだか自分の体じゃないような感覚さえしました。

 

こうしてフェンス際のマジカルミステリーツアーが終わりました。でもまだ夢が醒めていない感じがしています。

 

 

 

あのとき僕らを呼び止めてくれたふたりのスタッフに本当に感謝しています。

疑ってしまって本当に申し訳ないです。

 

そしてこんな素敵なサプライズを考えてくれたポールとスタッフの皆さんにも感謝です!

 

ポールといっしょに最高の音楽を届けてくれたラスティ、ブライアン、ウィックス、エイブに感謝です!


ありがとう!ポール!

最高のプレゼントでした!

 

 

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オハラブレイクは素晴らしい

今年も昨年に引き続き、8/3から8/5に猪苗代湖畔で開催された「オハラブレイク2018」にいってきました。このフェスはアラバキロックフェスと同じ主催によって開催されている音楽とアートのフェスです。昨年初参加だったのですが、あまりにも楽しかったのでアラバキで先行販売されていたチケットを即買いして、今年も参加してきました。

 

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(磐梯山を望む天神浜というところで開催されています。こちらは有料コテージ)

ステージは3つで、それぞれ森の中に小さなステージが1つ、森と砂浜の間に中くらいのステージが1つ、砂浜に比較的大きなステージが1つ設営され、それぞれのステージ間の移動も5分くらいでできます。砂浜にあるステージはサンダルさえもってけば、水につかりながら聞くこともできます。これが結構楽しい。

 

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(海上の中央にあるステージ「猪苗代野外音楽堂」。奥に見えるのが猪苗代湖)

 

このフェスの醍醐味の最たるものは、もちろん出演アーティストたちの音楽であるのは間違いないんですが、なんといってもいいのが会場の雰囲気です。

遠くに磐梯山を望む砂浜。森の中を吹く風。キャンプ場にいったらたまたま音楽フェスをやっていたくらいの雰囲気というか、ロックフェスにあるようなギラギラした感じがないのです。

 

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(イワナの塩焼きを売っていたお兄さん。笑顔が素敵。みんな優しいです)

 

それもそのはずコンセプトは「大人の文化祭」。公式サイトにはこう書かれています。

 

音楽、舞台、美術、写真、映画、小説、ファッション、食など、様々なジャンルで活躍する表現者=アーティストとともに、磐梯山と猪苗代湖に包まれた壮大なロケーションの中、音楽や芸術、食など様々な「文化」を感じながら、世界中のどこにもない、カラフルで穏やかな空間にて、ご来場の方々が思い思いの楽しみ方で過ごす

 

本当にこれを実現しようとスタッフのみなさんやアーティストが腐心しているのがわかります。「大人の文化祭」といっても子連れで楽しんでいる人もかなり多く、大人が音楽を楽しむかたわらで子供たちは猪苗代湖で泳いだり、ワークショップでちょっとした工作をしたりと、親子そろって楽しめる工夫がされています。

 

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(キヨシローの娘さんの百世さんのハンコアート。ライブペインティングなどもやってます)

 

もちろん出演ミュージシャンはすごい面々です。僕はピーズのはるさん、トモフ、古市コータローさん、折坂悠太さん、フラカン、グリムスパンキー、キングオールスターズなどをお目当てに行ったのですが、去年と同じくいろんなミュージシャンに目移りして、ほぼ休憩もせずにずっと音楽に浸ってきました。ふだん全く聞かない音楽にふれるのもフェスの醍醐味です。

 

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(ピーズ武道館のタオルのかかったテント発見!うれしい!)

アーティストとの距離が近いのも本当にいいところで、人によっては出番以外はその辺を歩いていてサインをもらえたり、写真を一緒に撮ってもらえたりします。もちろん彼らのサービス精神あってのものですが。今年は折坂悠太さんとお会いして一緒に写真を撮ってもらえました!

 

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(日没直後の猪苗代湖。伊坂幸太郎氏いわく、世界で一番美しい日没とのこと)

 

車を持っていないので、磐越西線「磐梯熱海」駅近くのホテルに泊まり、「猪苗代」まで電車移動して、そこから出ているシャトルバスに乗って移動しています。シャトルバスもそんなに焦って乗らなくてもいいペースで周回しているので、ストレスなく現地に行けます。

 

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アラバキでオリジナルTシャツつきの前売りチケットが先行販売されていて、これにシャトルバスのチケットもついているので、スケジュールが大丈夫そうなら買ってしまうのが超オススメです。4000円くらい安く買えます。

 

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(もちろん忘れてはならない。福島の復興)

 

ゆるーく楽しめる音楽フェス「オハラブレイク」。Twitterのフォロワー数などをみるにアラバキほどまだ有名ではないのでしょうが、本当に気楽に楽しめるフェスなので、出演アーティストに一人でも興味がある人がいたら、ぜひぜひ足を運んでみてほしいです。 

 

フラワーカンパニーズ トウキョウサマレスト2018 で「ハイエース」に泣く

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フラカンとの出会い

フラカンのトウキョウサマレスト2018行ってきました!昨年のオハラブレイクで見てから新アルバムの『ROLL ON 48』を買って、通勤時間にヘビロテで聞いていました。

一年前には名曲「深夜高速」以外には名前しか知らないバンドでしたが、youtubeにアップされている手の込んだPVをみてジワジワとハマっていき、昨年からはじまったオジロックブーム(マイブーム)も手伝い、大好きなバンドになっています。

 

www.youtube.com

こちらは9分間にわたるドラマ仕立ての「元少年の歌」。これをみて。思わず「がってん寿司」にいってしまったりしました。ちなみに今回のライブではコーラスでBABAの真城めぐみさんとうつみようこさんが参加していたので、「元少年少女の歌」になっていました。

 

鈴木圭介さんは伊集院さんのラジオのゲストにも何度かきていて、トークがとても面白かったので、MCにも期待していたのですが、グレートさんとBABAのおふたりも混ざって爆笑を巻き起こしていました。

ハイエースという曲

さて、この1年『ROLL ON 48』を聞いていたのは、なによりもその中で久しぶりに心をわしづかみにされた名曲「ハイエース」があるからです。

友人にギタリストが多く、移動と演奏とその他もろもろの活動で忙しくしている彼ら彼女らの姿とダブってしまったのか、はたまた四十路を超えてうすぼんやりと「残り時間」を意識し始めた自分と重ねてしまったのか、とにもかくにも本当にしみてしまったのです。

 

www.youtube.com

約30分の徒歩通勤時間の間、イヤホンを耳に差し込み『ROLL ON 48』を再生するのですが、「ハイエース」が終わっては、またリピートして、気づいてみれば「ハイエース」しか聞いていないという日もありました。たぶんこの1年間で最も聞いていた曲なのではないかと思います。

 

ハイエースと隣のダンディ

そして、そのときがやってきました。ステージの照明が少し暗くされ、ちょっといままでにない緊張感というか静謐感が開場を包みました。ギターのイントロが静かに始まります。

この時点ですでにややウルっときてしまったのですが、まだまだガマン。そして圭介さんが歌い始めました。

 

ほこりまみれのハイエースに乗って 今日もどこかの町へと走る

6時間くらいか 10時間超えるか 事故が無いことを祈りながら

 

もう、ここでツツーと涙が。こうやって文章に書いてみるとふつうの言葉なのかもしれませんが、圭介さんのキメの細かいヤスリのような歌声が、心のメッキを優しく剥がしてどんどん入ってくるのです。本物の歌というやつです。

 

歌が続いてきます。

 

ライブの参加スタイルというのはいろいろあって、僕はどちらかといえば積極的にノッていって腕を突き上げたり、歓声を上げたり、大きく拍手をしたりするタイプです。

その日はたまたま隣に50代ごろとみられるダンディな眼鏡の男性がいらしたのですが、彼は小さいバッグを胸元で抱きしめるようにしていて、微動だにしないでクールに聞き入る、僕とは真逆のタイプの方でした。

 

歌が続いてきます。

 

かつてここにはあった 入りきらないほどの 夢と情熱 そして若さ 

 

このあたりでツツーだった涙がポロポロになってました。ちょっと自分でもびっくりするくらいの容易さです。

 

歌が続いていきます。

 

何度も何度も 季節を見送った

笑いながら 探しながら くぐり抜けてきた

歌の中を 歌の中を

 

このときにふと「隣のダンディはどうなんだろう?」と見てしまったのがいけなかった。

見てしまったのです。彼の頬をつたうものを。

さきほどはバッグを抱きしめていた手が、今は涙をぬぐっていました。

 

もうそれを見てしまったら、僕にとっては「お前もいま泣いていい!」と言われたようなものです。

ボロボロとボロボロとアツいものがこみ上げ、顎から滴り落ちるくらい流れてました。

涙のハイエースが深夜高速を爆走です。

涙のガソリン垂れ流しです。

 

歌が続いていきます。クライマックスへと。

 

いつまでこんなの続けてるんだよ いつまでこんなの続けられんだよ

圭介さんの歌声がテンションを増して、くたびれたハイエースのギアが上がって行きます。そしてそれと同時に涙も止まっていきました。

 

一発逆転!ガキの寝言か!夢売る商売!わかってるって!

やめたくないとか やめられないとか 誰かのためとか どうでもいいわ

 

ここまでにはなんとか自分を取り戻し、「HI YES!」のコールアンドレスポンスには参加できました。これは絶対やりたかったのであぶなかった。

 

そして1コーラス目のリフレインが終わり、楽曲の最後の竹安さんのギターの音が消えていきました。

水を打ったような静けさ。ライブハウスでやるロックバンドのコンサートとは思えない静寂が会場を包みました。クラシックギターの演奏後に訪れる静寂に似ています。そして万雷の拍手と歓声。

隣のダンディをチラッと見ると、元の微動だにしないスタイルに戻っていました。僕が見たのは幻だったのかと思うほど、全く同じポーズに戻っていました。でも、なんだか同じものを共有したという、一方的な親近感を抱かずにはいられませんでした。

 

ライブはその後もBABAのステージと爆笑トークもあって大いに盛り上がり、毎度のことながらふくらはぎはパンパンで汗だくです。こうして僕のフラカンのライブハウスでの初ライブ参戦は大満足に終わりました。

 

いやーそれにしても29年一緒にやってきたバンドのグルーブは本当にすごかった。次にフラカンに会えるのは来週にせまった「オハラブレイク2018」。楽しみです!