今年もポールが!
ポールが今年も来日してくれるとのことで、さっそくチケットをゲットしました。今回のワールドツアーは「Freshen Up」。11/1の東京ドームが待ち遠しい日々が続いています。
前回のツアーからは1年ちょっと。高齢にもかかわらず、ハイペースで来日してくれるポール。本当にあの体のどこにそんなエネルギーがあるのかと不思議に思います。
One on One Japan Tour 東京ドームでおきたこと
ここに書き残すのは2017年4月27日に、僕にとつぜん訪れた奇跡のような出来事についてです。何かの時に振り返って読めたらと思い、書き残しておくことにしました。
2015年の「Out There Japan Tour」から2年ぶりにポールが来日しました。「One on One Japan Tour」もなんとか2階席の一番後ろの方のシートを手に入れられたので、仕事を早退して東京ドームに向かいました。
少し肌寒かったですが、ドーム前には日本中(世界中?)からオーディエンスが集い、グッズ販売はとんでもない長蛇の列。お手製のポールのお面をかぶった人がいたり、サージェントペパーズのコスプレをしている人もいたりして最高の雰囲気。
一緒に行った彼女はMACCAキャップに、Out There Tシャツ(ユニオンジャックヴァージョン)、手にはOne on Oneのトートバッグとバッチリな体勢。僕もThe Beatlesの4人が一筆書きで刺繍されたTシャツを着て腹ごしらえをしました。
2枚のチケット
手荷物検査を終えて、チケットをモギられ、ドームの中へ。最後方の席にむかうため、4階まで階段を上がって、トイレを済ませて入場ゲートに向かおうとしていた時のことです。
とつぜんひとりの男性スタッフに「少し質問したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」と呼び止められました。彼の後ろにはとても上品な外国人スタッフらしき女性がいました。何かの取材のようなものだろうかと思い、立ち止まりました。
「ポールのことは好きですか?」と質問されたので、もちろん好きですし、ビートルズも好きですと答えました。「ライブに行ったことはありますか?」と聞かれたので、2年前(Out There 時)もここに来ました。と答えました。
男性スタッフが僕たちの返答を女性に通訳して、ふたりはしばらく顔を見合わせ、女性が男性に何かを言い、そのあと男性スタッフが「あなたたちにポールからプレゼントがあります」といって、僕たちにチケットを差し出してくれたのです。
それはなんと2枚のアリーナのチケットでした。
一瞬なんのことか分かりませんでした。ふたりとも身なりもとても洗練されていて、スタッフのパスも首から下げていますが、あまりにいきなりのことにビックリしてしまって、喜ぶと同時に、「こ、これは何かの詐欺みたいなやつなのか?」と少し不安になりました。
そんな僕の様子を見て、女性スタッフが「心配しないで、私はポールのアシスタントで、これは本当のことよ。ほらスタッフパスも持っているでしょ?いま手にもっているこの無線機もちゃんとポールに繋がるわよ」とパスと無線機を見せていいました。本当だということをしめすために無線機にむかって「ポール!」と冗談で話しかけていました。
通訳をしていてくれた男性スタッフは「疑うのも無理のないことですが、本当のことですよ」と微笑んで安心させるように言ってくれました。それでもビビリな僕は、念のため自分が持っているチケットを写真に撮り(なにかトラブルが起きたときの助けになるかもと思ったのです)、チケットを彼女らがもっていたものと引き換えてもらいました。
「こういったサプライズをポールはいつも考えていて、あなたたちのような方にプレゼントしているのです。ペアになってますので、おふたりで楽しんできてください」と男性スタッフはにっこりと話し、アリーナ席への道順を教えてくれました。
アリーナへ
なんだか狐につままれたような気持ちで、でもとにかくお礼を言って二人と別れ、男性スタッフが教えてくれた通路を歩き、階段を下りてアリーナ席に向かいました。正直なところ、歩いてるときも「こんなうまい話があるのだろうか?」「ニセモノだったらどうしよう」と疑念がぬぐえないままでした。
2年前も2階席のほぼいちばん後ろで、もちろんドームのアリーナ席など行ったことありません。長い通路を歩き、たくさんの座席の間をぬけて、アリーナ席にたどりつきました。下から見上げるドームは本当に巨大で、ここがいまから満員になったらどんなのことになってしまうのか、どこか現実感を欠いた光景でした。
チケットには「Aブロック」との記載がされていて、開演時間も近づいてきているので、とにかくそこを目指しました。なにしろアリーナ席のAブロックがどのあたりなのかも全然知識が無いので、ブロック表示を見ながら探し歩きました。
そして、われわれを待っていたのは、
なんと一番前のブロックなのでした。
「ホントに?」「すごーい!」と喜ぶわれわれ。
今度は座席探しです。アリーナ席は膨大な数の折り畳み椅子からなっていて、それぞれの背もたれには席番が書かれたシールが貼ってありました。チケットに記載されている席番の椅子を探していったわれわれを待っていたのは、
・
・
・
・
なんと最前列中央部の席でした。
目の前にはステージと客席をへだてるフェンスがありました。「え!?ホントに!?ホントにここなの?」「どーしよ!どーしよ!」と何度も座席の番号とチケットの席番を確認して、さらに心配なので近くのスタッフにも確認してもらいました。間違いないとのことでした。
本当に本当なんだ。
急に心臓がバクバクして体がフワフワしてきます。
ポールのライブを最前列で聞けるなんて!
しかも東京ドームで!
もう訳が分からない興奮で体が震えました。本当に僕らがここにいていいんだろうか?開演時間までずっとソワソワして立ったり座ったりの繰り返しです。まわりにはあまり芸能界に明るくない僕でも知っている、芸能人やミュージシャンの姿もありました。
・
・
いよいよその時が
ポールとバンドメンバーたちが登場してオープニングナンバーの「A Hard day's night」が始まります。
ポールが目の前に!
近い!
どのフレットを押さえているかまで見える!
いま絶対僕を見ている!
もうなにがなにやらです。(実際見てなくても心の目で見られてるのです)
(なんと撮影可能でした!)
ベース、エレキギター、アコースティックギター、ピアノ、ウクレレ…次々に楽器を持ち替えて演奏し、時にシャウトし、時に日本語でしゃべり、時にユーモラスにお尻を振り、時にジョークを飛ばしてオーディエンスを笑わせようとするポールの姿が目の前にありました。
巨大なドームではどうしても音のラグがありますが、僕らのいるところにはバンドが演奏している音がダイレクトに響いてきたのにも感激しました。カッティングや足を踏み鳴らす音が、そのまま生で聞こえてきます。ソリッドなバンドサウンドに体が勝手に反応し、その音の美しさと密度に圧倒されました。
偉大さとは
ポールはもちろんスーパースターで、ある種のアイドルでもあり、まちがいなく20世紀以降の世界最高峰のミュージシャンの一人です。多くのフォロワーを産み、その後の音楽に多大な影響を与え、多くの人の人生を変えてきました。まさに生きるレジェンド、今後の音楽史にも残り続ける、「偉大な」アーティストです。
でも一方で僕の目には、ポールにとっては、そんな「偉大さ」とは無縁な存在にも見えました。
間近で見るポールは、バンドメンバーといっしょにお客さんを楽しませよう、丁寧なコンサートをしよう、いい音楽を届けようと、ひたむきに歌い、演奏するひとりのシンガー/プレイヤーであり、みんなを笑わせよう、ハッピーにしよう、そして自分が受け取ってきた何か大切なことを伝えようとしているひとりの人間でした。
その姿に本当に心を打たれました。
なんというか、「本当の『偉大さ』というのはこういうことなのだな」と魂が震えるのを感じました。
音楽とポールの一挙手一投足にもりあがる東京ドーム。僕もほかのお客さんたちといっしょに飛び跳ね、こぶしを突き上げ、頭を振り、手を振り、手をたたき、カラダをゆすり、足踏みし、聞き入り、歌い、笑い、涙し、ポールの名前を声をからして叫びました。こんな時間がずっと続いたらと本当に思いました。
・
・
・
でもやがて、最後の音が鳴り終わり、紙吹雪が降り注いできました。
演奏時間はアンコールふくめて150分超。曲数は39曲。水も飲まず、ほとんど休まず、最後まで一切の手抜きナシで世界最高峰の音楽を届けてくれました。年齢は74歳。いったいどこからそんなエネルギーが湧いてくるのでしょうか。
夢のような、おとぎ話に迷い込んだような時間でした。何か大きなものに触れたと感じる時間でした。
圧倒的な体験の余韻に包まれて、呆けたようになった心身。なんだか自分の体じゃないような感覚さえしました。
こうしてフェンス際のマジカルミステリーツアーが終わりました。でもまだ夢が醒めていない感じがしています。
・
・
あのとき僕らを呼び止めてくれたふたりのスタッフに本当に感謝しています。
疑ってしまって本当に申し訳ないです。
そしてこんな素敵なサプライズを考えてくれたポールとスタッフの皆さんにも感謝です!
ポールといっしょに最高の音楽を届けてくれたラスティ、ブライアン、ウィックス、エイブに感謝です!
ありがとう!ポール!
最高のプレゼントでした!