5月26日から6月1日に原宿の「デザインフェスタギャラリー イースト」で開催された『#filmisnotdead -Film Photography Exhibition-』に出展してきました。右も左も分からない初めての出展でしたが、なんとかカタチにすることができました。ちょっと時間は空いてしまいましたが、その経緯をブログに残しておこうかと思います。
<フィルムを愛してやまない人のための、 フィルム写真だけの写真展>
スマートフォンをはじめ、デジタル一眼レフ、コンパクトデジタルカメラなどで 誰もが気軽に、そしてきれいに写真を撮れるようになった現代。 テクノロジーの発達による写真文化の隆盛は、旧時代のフィルムを使った写真独特の風合いにも光をあてました。
しかし一方では、フィルムの一部銘柄が生産中止になったり、現像薬品や印画紙の価格が高騰するなど、デジタルデータの利便性からそうしたフィルム写真製品の市場規模が縮小し続けているのも事実です。
本展示はそんなフィルム写真が主役の、フィルム写真だけの企画展。 展示タイトルは欧米を中心としたフィルム写真愛好家の間で使われているinstagramのハッシュタグ #filmisnotdead=”フィルムは死なない”からとりました。
昨年の第1回開催以来、フィルム人気は徐々に好転しつつあります。 しかしさらなるフィルム写真文化の発展のため、本年は参加枠を拡大。
より多くの人にフィルム写真の魅力を発信する展示となります。
『#filmisnotdead写真展』はオフィシャルサイトの企画コンセプトにある通り、フィルム写真のみの展示会です。フィルムカメラで撮影した写真なら何でもOKという間口の広い合同展示で、僕のようなアマチュア愛好家からプロとして活動されている方まで出展者は様々でした。
出展前にブログで書いた通り、僕は写真仲間とひとつのスペースをシェアしての出展。こういった出展自体が初めての経験ですし、僕らの選択したスペースの出展料も約24000円とけっこうお高いので、いっしょにやれる相手がいるのは、正直サイフ的にも精神的にも助かりました。
こちらが公式サイトに掲載されたアイキャッチ画像。下の"Kentaro「するひと」"が僕の展示になります。勤め人のアマチュア写真スキーが初めて写真展に出展するまでのあれやこれやを書いていきたいと思います。写真展に出展してみようと思っている方の参考に、ちょっとでもなれたら幸いです。
作品えらび
展示の4週間ほど前からフィルムの選定を開始しました。ちゃんとフィルムアルバムなどで管理をしていないので、クラウドにあるデータやハードディスクの片隅にひっそりと眠っているデータを手掛かりに、フィルムの束をガサゴソやるところから始まります。
ライトボックスが引っ越しでどこかへ行ってしまったので、明るいうちにフィルムの束を窓際で光に透かし、ダーマトを片手にお目当てのネガ探し。見つかったらひとつひとつのネガにチェックを入れていきます。
この作業、やってみると想像以上にたいへんでした。ちょっと疎遠になってしまっている人などが写っていたり、すっかり忘れてしまったイベントの写真がでてきたり、今はもう亡くなってしまった人が写っていたり…ついつい手が止まってしまいます。
それでも、新しく手にしたレンズやカメラでひたすら撮りまくっている喜びのようなものが写真から読み取れたり、36枚撮りフィルムの最後の方がテキトーになっている「フィルム写真あるある」みたいのがあったり、思わず「ふふふ」となってしまう楽しい時間でもありました。
何日間かにわたってやった作業で、様々な脱線もあり、合計すると何時間かかったか分かりませんが、最終的に1000枚ちょいのネガから30数枚を選びました。それぞれの写真に仮タイトルもつけることにしました。「写真にタイトルつけるかつけないか論」は意見が様々ですが、展示の意図としてはあったほうがいいだろうと思った次第です。
タイトルをつける際にそれぞれの写真の使用機材と使用フィルムをスプレッドシートにメモしておきました。写真好きな人の中にはそういったデータも気になる人がいるかもしれないと思い、展示の際にリストを置くことにしました。
僕は現像時に写真はすべてデータ化していて、「LeicaM4_Elmar50mm_across100_20180429」のように「カメラ_レンズ_フィルム_現像日」というフォルダ名でフィルム単位でデータ管理まがいのことをしているのですが、思わぬところで役に立ちました。
作品のプリント
出展の2週間前に、日ごろから仲良くしていただいている『フォトデポ彩色兼美』さんという写真屋さんのラボに行きプリント作業をしました。選定の段階で35㎜と6×6をどちらも展示したくなり、店長さんと相談。
やりたい展示の仕方の一部がスクエアである必要があったこともあり、迷った末に35㎜をトリミングし、全てスクウェアフォーマットで展示することにしました。インスタグラムの現代性みたいのも頭の片隅にあったのだと思います。
トリミングした写真を何パターンか用意して見比べたり、濃淡を見比べたり、大まかなレイアウトを考えたりしているうちに7時間ほどの時間が過ぎていました。アドバイスをしてくださり、こちらの要望に丁寧に応えてくださった『彩色兼美』さんにはホント感謝の言葉しかないです。
パネルづくり
出展1週間前にパネル作りにとりかかりました。写真というのは額装、そのままピン止め、パネル貼りなど、見せ方の選択肢が山のようにありますが、僕は初めてということもありオーソドックスなパネル貼りにすることにしました。スチレンボードでパネルを作り、それを「ひっつき虫」という簡易接着剤で展示スペースの壁に貼るだけのシンプルな展示方法です。
写真が200㎜×200㎜のスクウェアなので、603㎜×455㎜のA2サイズのスチレンボードをカットして使うことにしました。ボード1枚から3×2で6枚の正方形パネルが作れる計算です。
厳密には写真の大きさは200㎜なのでちょっとパンの耳みたいな部分ができてしまうのですが、603㎜から3mmを落として600㎜にしたものを3分割するにしても、201㎜に三分割したものをあとで1mmをそぎ落とすにしても大変そうなので、シンプルに201mmの三分割にしました。ためしに貼ってみると1㎜の余りはまったく気にならない感じでした。
写真の印画紙の反りに引っ張られないように、ボードにはある程度の厚みが求められますが、200㎜四方でしたらサイズ的にはボードの厚さは5㎜で問題なかったです。僕が購入したのは下記の10枚入り。たぶんこのくらいのサイズでパネルを作るには一番リーズナブルなんじゃないかと思います。

スチレンボード(片面粘着パネル)SEKISUI NKタックTA 5mm厚 A2(よりやや大きめ)10枚入
- 出版社/メーカー: 株式会社ジョーホク
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左手に定規を持ち、右手にカッターを持ち、暑さ5㎜でA2サイズという、生活空間にあるとちょっとギョッとするサイズの板をひたすら切っていきます。

プラス カッターマット 両面 A2 450×600mm グリーン 48-586
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作業はこちらのカッターマットの上で行いました。このマットをテーブルにマスキングテープなどで固定するだけで簡易作業台の完成です。調子に乗って切っていたら、マットごとズレそうになってヒヤッとしたので、途中からマスキングテープの量をふやしてガッチリ固定しました。(カッターである程度大きいものを切るときは、マットの固定は養生テープなどできちんとしたほうが良さそうです)。
定規はプラスチック製のものだとカッターに削られてしまうので、アルミ製のものを使用しました。本当は直角定規の方がいいのでしょうけれど、200㎜四方程度なら問題なくいけました。AMAZONで644円とお手頃なので、一家に一本あってもいいかもしれません。

シンワ測定 アルミ直尺 アル助 シャイニングブルー 60cm 65434
- 出版社/メーカー: シンワ測定(Shinwa Sokutei)
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「刃物はケチらない方がいい」と聞くので、初めてちょっといいカッター(といっても700円くらいですが)も買いました。オルファのこちらのやつです。グリップもよく、カッター自体にある程度重さがあるので安定して使えます。切れ味鋭く、思った通りのカットができるなかなかのワザモノです(直線しか切ってませんが)。
スチレンボードをマットに置く、採寸してガイドラインを鉛筆で書く、定規をあてる、カッターで切る。このいつ終わるとも知れぬ作業をひたすら繰り返します。半分くらい終わったところで、「なんで30枚も展示することにしたんだろう」と自分を呪ったりもしました。
この作業、ボードをまとめて切ってからまとめて写真を貼り付けたほうが効率はいいのでしょうけれど、2,3枚カットし終わったら、写真を実際に貼ってみてパネルにしながら進めていった方がいいかもしれません。完成品のチェックという意味もありますが、実際にパネルに貼ったモノが積みあがっていった方が、高揚感があって精神的にラクなんじゃないかと。
レイアウトをきめる
定規スキルとカッタースキルが我ながらちょっと上達してきたなー、と感じ始めるころに、すべてのパネルが完成しました。こういったインスタントな作業あるあるですね。
僕が使える展示スペースが横幅1200㎜なので、それに収まるように写真の並びを決めていきます。200㎜のスクエア写真を構想したレイアウトの5列×6段で並べてみると1000㎜×1200㎜。都内の決して広くはないマンションのフローリングの上に置いてみると、それなりに壮観でした。
ここからは並び順の模索です。「男女比をどうしよう?」「被写体との距離感で分けようか?」「シチュエーションで分けようか?」「アレとアレがかぶってるんじゃないか?」「被写体の視線はどうか?」などなど、正解の分からぬパズルにうんうん言いながら取り組みます。
左上に展示タイトル、右下に各写真のタイトルをまとめて記載することにし、並び方が決まりました。これで準備は終わりですが、なにしろ初めての出展なので、どこまで準備すれば終わりなのかはよく分かりません。とりあえずやれることはやったということでレイアウト決定稿の写真を撮り、搬入用の紙袋に写真をしまいました。
出展編につづきます。