Take your Time,Take your Life

クラシックギター、ソロギター、カメラ、音楽、映画がすきです。

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いきなり最前列!?「ポール・マッカートニー One on One Japan Tour 東京ドーム公演」の奇跡

今年もポールが!

 

ポールが今年も来日してくれるとのことで、さっそくチケットをゲットしました。今回のワールドツアーは「Freshen Up」。11/1の東京ドームが待ち遠しい日々が続いています。

前回のツアーからは1年ちょっと。高齢にもかかわらず、ハイペースで来日してくれるポール。本当にあの体のどこにそんなエネルギーがあるのかと不思議に思います。

 

One on One Japan Tour 東京ドームでおきたこと

 

ここに書き残すのは2017年4月27日に、僕にとつぜん訪れた奇跡のような出来事についてです。何かの時に振り返って読めたらと思い、書き残しておくことにしました。

 

2015年の「Out There Japan Tour」から2年ぶりにポールが来日しました。「One on One Japan Tour」もなんとか2階席の一番後ろの方のシートを手に入れられたので、仕事を早退して東京ドームに向かいました。

 

少し肌寒かったですが、ドーム前には日本中(世界中?)からオーディエンスが集い、グッズ販売はとんでもない長蛇の列。お手製のポールのお面をかぶった人がいたり、サージェントペパーズのコスプレをしている人もいたりして最高の雰囲気。

 

一緒に行った彼女はMACCAキャップに、Out There Tシャツ(ユニオンジャックヴァージョン)、手にはOne on Oneのトートバッグとバッチリな体勢。僕もThe Beatlesの4人が一筆書きで刺繍されたTシャツを着て腹ごしらえをしました。

 

 2枚のチケット

 

手荷物検査を終えて、チケットをモギられ、ドームの中へ。最後方の席にむかうため、4階まで階段を上がって、トイレを済ませて入場ゲートに向かおうとしていた時のことです。

 

とつぜんひとりの男性スタッフに「少し質問したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」と呼び止められました。彼の後ろにはとても上品な外国人スタッフらしき女性がいました。何かの取材のようなものだろうかと思い、立ち止まりました。

 

「ポールのことは好きですか?」と質問されたので、もちろん好きですし、ビートルズも好きですと答えました。「ライブに行ったことはありますか?」と聞かれたので、2年前(Out There 時)もここに来ました。と答えました。

 

男性スタッフが僕たちの返答を女性に通訳して、ふたりはしばらく顔を見合わせ、女性が男性に何かを言い、そのあと男性スタッフが「あなたたちにポールからプレゼントがあります」といって、僕たちにチケットを差し出してくれたのです。

 

 

 

 

 

それはなんと2枚のアリーナのチケットでした。

 

一瞬なんのことか分かりませんでした。ふたりとも身なりもとても洗練されていて、スタッフのパスも首から下げていますが、あまりにいきなりのことにビックリしてしまって、喜ぶと同時に、「こ、これは何かの詐欺みたいなやつなのか?」と少し不安になりました。

 

そんな僕の様子を見て、女性スタッフが「心配しないで、私はポールのアシスタントで、これは本当のことよ。ほらスタッフパスも持っているでしょ?いま手にもっているこの無線機もちゃんとポールに繋がるわよ」とパスと無線機を見せていいました。本当だということをしめすために無線機にむかって「ポール!」と冗談で話しかけていました。

 

通訳をしていてくれた男性スタッフは「疑うのも無理のないことですが、本当のことですよ」と微笑んで安心させるように言ってくれました。それでもビビリな僕は、念のため自分が持っているチケットを写真に撮り(なにかトラブルが起きたときの助けになるかもと思ったのです)、チケットを彼女らがもっていたものと引き換えてもらいました。

 

「こういったサプライズをポールはいつも考えていて、あなたたちのような方にプレゼントしているのです。ペアになってますので、おふたりで楽しんできてください」と男性スタッフはにっこりと話し、アリーナ席への道順を教えてくれました。

 

 アリーナへ

 

なんだか狐につままれたような気持ちで、でもとにかくお礼を言って二人と別れ、男性スタッフが教えてくれた通路を歩き、階段を下りてアリーナ席に向かいました。正直なところ、歩いてるときも「こんなうまい話があるのだろうか?」「ニセモノだったらどうしよう」と疑念がぬぐえないままでした。

 

2年前も2階席のほぼいちばん後ろで、もちろんドームのアリーナ席など行ったことありません。長い通路を歩き、たくさんの座席の間をぬけて、アリーナ席にたどりつきました。下から見上げるドームは本当に巨大で、ここがいまから満員になったらどんなのことになってしまうのか、どこか現実感を欠いた光景でした。

 

チケットには「Aブロック」との記載がされていて、開演時間も近づいてきているので、とにかくそこを目指しました。なにしろアリーナ席のAブロックがどのあたりなのかも全然知識が無いので、ブロック表示を見ながら探し歩きました。

 

 

そして、われわれを待っていたのは、

 

 

なんと一番前のブロックなのでした。

 

「ホントに?」「すごーい!」と喜ぶわれわれ。

 

今度は座席探しです。アリーナ席は膨大な数の折り畳み椅子からなっていて、それぞれの背もたれには席番が書かれたシールが貼ってありました。チケットに記載されている席番の椅子を探していったわれわれを待っていたのは、

 

 

 

 

 

なんと最前列中央部の席でした。

 

 

目の前にはステージと客席をへだてるフェンスがありました。「え!?ホントに!?ホントにここなの?」「どーしよ!どーしよ!」と何度も座席の番号とチケットの席番を確認して、さらに心配なので近くのスタッフにも確認してもらいました。間違いないとのことでした。

 

 

本当に本当なんだ。

 

急に心臓がバクバクして体がフワフワしてきます。

 

ポールのライブを最前列で聞けるなんて!

 

しかも東京ドームで!

 

 

 

もう訳が分からない興奮で体が震えました。本当に僕らがここにいていいんだろうか?開演時間までずっとソワソワして立ったり座ったりの繰り返しです。まわりにはあまり芸能界に明るくない僕でも知っている、芸能人やミュージシャンの姿もありました。

 

 

 

いよいよその時が

 

ポールとバンドメンバーたちが登場してオープニングナンバーの「A Hard day's night」が始まります。

 

ポールが目の前に!

 

近い!


どのフレットを押さえているかまで見える!


いま絶対僕を見ている!

 

もうなにがなにやらです。(実際見てなくても心の目で見られてるのです)

 

 

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(なんと撮影可能でした!)

 

ベース、エレキギターアコースティックギター、ピアノ、ウクレレ…次々に楽器を持ち替えて演奏し、時にシャウトし、時に日本語でしゃべり、時にユーモラスにお尻を振り、時にジョークを飛ばしてオーディエンスを笑わせようとするポールの姿が目の前にありました。

 

巨大なドームではどうしても音のラグがありますが、僕らのいるところにはバンドが演奏している音がダイレクトに響いてきたのにも感激しました。カッティングや足を踏み鳴らす音が、そのまま生で聞こえてきます。ソリッドなバンドサウンドに体が勝手に反応し、その音の美しさと密度に圧倒されました。

 

 偉大さとは

ポールはもちろんスーパースターで、ある種のアイドルでもあり、まちがいなく20世紀以降の世界最高峰のミュージシャンの一人です。多くのフォロワーを産み、その後の音楽に多大な影響を与え、多くの人の人生を変えてきました。まさに生きるレジェンド、今後の音楽史にも残り続ける、「偉大な」アーティストです。

 

でも一方で僕の目には、ポールにとっては、そんな「偉大さ」とは無縁な存在にも見えました。

 

間近で見るポールは、バンドメンバーといっしょにお客さんを楽しませよう、丁寧なコンサートをしよう、いい音楽を届けようと、ひたむきに歌い、演奏するひとりのシンガー/プレイヤーであり、みんなを笑わせよう、ハッピーにしよう、そして自分が受け取ってきた何か大切なことを伝えようとしているひとりの人間でした。

 

その姿に本当に心を打たれました。

なんというか、「本当の『偉大さ』というのはこういうことなのだな」と魂が震えるのを感じました。

 

 

音楽とポールの一挙手一投足にもりあがる東京ドーム。僕もほかのお客さんたちといっしょに飛び跳ね、こぶしを突き上げ、頭を振り、手を振り、手をたたき、カラダをゆすり、足踏みし、聞き入り、歌い、笑い、涙し、ポールの名前を声をからして叫びました。こんな時間がずっと続いたらと本当に思いました。

 

 

 

 

でもやがて、最後の音が鳴り終わり、紙吹雪が降り注いできました。

 

演奏時間はアンコールふくめて150分超。曲数は39曲。水も飲まず、ほとんど休まず、最後まで一切の手抜きナシで世界最高峰の音楽を届けてくれました。年齢は74歳。いったいどこからそんなエネルギーが湧いてくるのでしょうか。

 

 

 

夢のような、おとぎ話に迷い込んだような時間でした。何か大きなものに触れたと感じる時間でした。

圧倒的な体験の余韻に包まれて、呆けたようになった心身。なんだか自分の体じゃないような感覚さえしました。

 

こうしてフェンス際のマジカルミステリーツアーが終わりました。でもまだ夢が醒めていない感じがしています。

 

 

 

あのとき僕らを呼び止めてくれたふたりのスタッフに本当に感謝しています。

疑ってしまって本当に申し訳ないです。

 

そしてこんな素敵なサプライズを考えてくれたポールとスタッフの皆さんにも感謝です!

 

ポールといっしょに最高の音楽を届けてくれたラスティ、ブライアン、ウィックス、エイブに感謝です!


ありがとう!ポール!

最高のプレゼントでした!

 

 

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オハラブレイクは素晴らしい

今年も昨年に引き続き、8/3から8/5に猪苗代湖畔で開催された「オハラブレイク2018」にいってきました。このフェスはアラバキロックフェスと同じ主催によって開催されている音楽とアートのフェスです。昨年初参加だったのですが、あまりにも楽しかったのでアラバキで先行販売されていたチケットを即買いして、今年も参加してきました。

 

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(磐梯山を望む天神浜というところで開催されています。こちらは有料コテージ)

ステージは3つで、それぞれ森の中に小さなステージが1つ、森と砂浜の間に中くらいのステージが1つ、砂浜に比較的大きなステージが1つ設営され、それぞれのステージ間の移動も5分くらいでできます。砂浜にあるステージはサンダルさえもってけば、水につかりながら聞くこともできます。これが結構楽しい。

 

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(海上の中央にあるステージ「猪苗代野外音楽堂」。奥に見えるのが猪苗代湖)

 

このフェスの醍醐味の最たるものは、もちろん出演アーティストたちの音楽であるのは間違いないんですが、なんといってもいいのが会場の雰囲気です。

遠くに磐梯山を望む砂浜。森の中を吹く風。キャンプ場にいったらたまたま音楽フェスをやっていたくらいの雰囲気というか、ロックフェスにあるようなギラギラした感じがないのです。

 

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(イワナの塩焼きを売っていたお兄さん。笑顔が素敵。みんな優しいです)

 

それもそのはずコンセプトは「大人の文化祭」。公式サイトにはこう書かれています。

 

音楽、舞台、美術、写真、映画、小説、ファッション、食など、様々なジャンルで活躍する表現者=アーティストとともに、磐梯山と猪苗代湖に包まれた壮大なロケーションの中、音楽や芸術、食など様々な「文化」を感じながら、世界中のどこにもない、カラフルで穏やかな空間にて、ご来場の方々が思い思いの楽しみ方で過ごす

 

本当にこれを実現しようとスタッフのみなさんやアーティストが腐心しているのがわかります。「大人の文化祭」といっても子連れで楽しんでいる人もかなり多く、大人が音楽を楽しむかたわらで子供たちは猪苗代湖で泳いだり、ワークショップでちょっとした工作をしたりと、親子そろって楽しめる工夫がされています。

 

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(キヨシローの娘さんの百世さんのハンコアート。ライブペインティングなどもやってます)

 

もちろん出演ミュージシャンはすごい面々です。僕はピーズのはるさん、トモフ、古市コータローさん、折坂悠太さん、フラカン、グリムスパンキー、キングオールスターズなどをお目当てに行ったのですが、去年と同じくいろんなミュージシャンに目移りして、ほぼ休憩もせずにずっと音楽に浸ってきました。ふだん全く聞かない音楽にふれるのもフェスの醍醐味です。

 

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(ピーズ武道館のタオルのかかったテント発見!うれしい!)

アーティストとの距離が近いのも本当にいいところで、人によっては出番以外はその辺を歩いていてサインをもらえたり、写真を一緒に撮ってもらえたりします。もちろん彼らのサービス精神あってのものですが。今年は折坂悠太さんとお会いして一緒に写真を撮ってもらえました!

 

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(日没直後の猪苗代湖。伊坂幸太郎氏いわく、世界で一番美しい日没とのこと)

 

車を持っていないので、磐越西線「磐梯熱海」駅近くのホテルに泊まり、「猪苗代」まで電車移動して、そこから出ているシャトルバスに乗って移動しています。シャトルバスもそんなに焦って乗らなくてもいいペースで周回しているので、ストレスなく現地に行けます。

 

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アラバキでオリジナルTシャツつきの前売りチケットが先行販売されていて、これにシャトルバスのチケットもついているので、スケジュールが大丈夫そうなら買ってしまうのが超オススメです。4000円くらい安く買えます。

 

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(もちろん忘れてはならない。福島の復興)

 

ゆるーく楽しめる音楽フェス「オハラブレイク」。Twitterのフォロワー数などをみるにアラバキほどまだ有名ではないのでしょうが、本当に気楽に楽しめるフェスなので、出演アーティストに一人でも興味がある人がいたら、ぜひぜひ足を運んでみてほしいです。 

 

フラワーカンパニーズ トウキョウサマレスト2018 で「ハイエース」に泣く

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フラカンとの出会い

フラカンのトウキョウサマレスト2018行ってきました!昨年のオハラブレイクで見てから新アルバムの『ROLL ON 48』を買って、通勤時間にヘビロテで聞いていました。

一年前には名曲「深夜高速」以外には名前しか知らないバンドでしたが、youtubeにアップされている手の込んだPVをみてジワジワとハマっていき、昨年からはじまったオジロックブーム(マイブーム)も手伝い、大好きなバンドになっています。

 

www.youtube.com

こちらは9分間にわたるドラマ仕立ての「元少年の歌」。これをみて。思わず「がってん寿司」にいってしまったりしました。ちなみに今回のライブではコーラスでBABAの真城めぐみさんとうつみようこさんが参加していたので、「元少年少女の歌」になっていました。

 

鈴木圭介さんは伊集院さんのラジオのゲストにも何度かきていて、トークがとても面白かったので、MCにも期待していたのですが、グレートさんとBABAのおふたりも混ざって爆笑を巻き起こしていました。

ハイエースという曲

さて、この1年『ROLL ON 48』を聞いていたのは、なによりもその中で久しぶりに心をわしづかみにされた名曲「ハイエース」があるからです。

友人にギタリストが多く、移動と演奏とその他もろもろの活動で忙しくしている彼ら彼女らの姿とダブってしまったのか、はたまた四十路を超えてうすぼんやりと「残り時間」を意識し始めた自分と重ねてしまったのか、とにもかくにも本当にしみてしまったのです。

 

www.youtube.com

約30分の徒歩通勤時間の間、イヤホンを耳に差し込み『ROLL ON 48』を再生するのですが、「ハイエース」が終わっては、またリピートして、気づいてみれば「ハイエース」しか聞いていないという日もありました。たぶんこの1年間で最も聞いていた曲なのではないかと思います。

 

ハイエースと隣のダンディ

そして、そのときがやってきました。ステージの照明が少し暗くされ、ちょっといままでにない緊張感というか静謐感が開場を包みました。ギターのイントロが静かに始まります。

この時点ですでにややウルっときてしまったのですが、まだまだガマン。そして圭介さんが歌い始めました。

 

ほこりまみれのハイエースに乗って 今日もどこかの町へと走る

6時間くらいか 10時間超えるか 事故が無いことを祈りながら

 

もう、ここでツツーと涙が。こうやって文章に書いてみるとふつうの言葉なのかもしれませんが、圭介さんのキメの細かいヤスリのような歌声が、心のメッキを優しく剥がしてどんどん入ってくるのです。本物の歌というやつです。

 

歌が続いてきます。

 

ライブの参加スタイルというのはいろいろあって、僕はどちらかといえば積極的にノッていって腕を突き上げたり、歓声を上げたり、大きく拍手をしたりするタイプです。

その日はたまたま隣に50代ごろとみられるダンディな眼鏡の男性がいらしたのですが、彼は小さいバッグを胸元で抱きしめるようにしていて、微動だにしないでクールに聞き入る、僕とは真逆のタイプの方でした。

 

歌が続いてきます。

 

かつてここにはあった 入りきらないほどの 夢と情熱 そして若さ 

 

このあたりでツツーだった涙がポロポロになってました。ちょっと自分でもびっくりするくらいの容易さです。

 

歌が続いていきます。

 

何度も何度も 季節を見送った

笑いながら 探しながら くぐり抜けてきた

歌の中を 歌の中を

 

このときにふと「隣のダンディはどうなんだろう?」と見てしまったのがいけなかった。

見てしまったのです。彼の頬をつたうものを。

さきほどはバッグを抱きしめていた手が、今は涙をぬぐっていました。

 

もうそれを見てしまったら、僕にとっては「お前もいま泣いていい!」と言われたようなものです。

ボロボロとボロボロとアツいものがこみ上げ、顎から滴り落ちるくらい流れてました。

涙のハイエースが深夜高速を爆走です。

涙のガソリン垂れ流しです。

 

歌が続いていきます。クライマックスへと。

 

いつまでこんなの続けてるんだよ いつまでこんなの続けられんだよ

圭介さんの歌声がテンションを増して、くたびれたハイエースのギアが上がって行きます。そしてそれと同時に涙も止まっていきました。

 

一発逆転!ガキの寝言か!夢売る商売!わかってるって!

やめたくないとか やめられないとか 誰かのためとか どうでもいいわ

 

ここまでにはなんとか自分を取り戻し、「HI YES!」のコールアンドレスポンスには参加できました。これは絶対やりたかったのであぶなかった。

 

そして1コーラス目のリフレインが終わり、楽曲の最後の竹安さんのギターの音が消えていきました。

水を打ったような静けさ。ライブハウスでやるロックバンドのコンサートとは思えない静寂が会場を包みました。クラシックギターの演奏後に訪れる静寂に似ています。そして万雷の拍手と歓声。

隣のダンディをチラッと見ると、元の微動だにしないスタイルに戻っていました。僕が見たのは幻だったのかと思うほど、全く同じポーズに戻っていました。でも、なんだか同じものを共有したという、一方的な親近感を抱かずにはいられませんでした。

 

ライブはその後もBABAのステージと爆笑トークもあって大いに盛り上がり、毎度のことながらふくらはぎはパンパンで汗だくです。こうして僕のフラカンのライブハウスでの初ライブ参戦は大満足に終わりました。

 

いやーそれにしても29年一緒にやってきたバンドのグルーブは本当にすごかった。次にフラカンに会えるのは来週にせまった「オハラブレイク2018」。楽しみです!

 

『伊集院光とらじおと放哉と山頭火と』山頭火全集99円と

伊集院光さんのラジオが好きで、オーデカナイトから途中ブランクもありながらも、ずっと聞き続けています。『深夜の馬鹿力』は当然のこと、二年前から大沢悠里さんの番組を終了とともに始まった『伊集院光とらじおと』も出来る限り聞いています。

『とらじおと』には月曜から木曜にそれぞれコーナーがあるのですが、木曜日のレギュラーコーナーに「伊集院光とらじおと放哉と山頭火と」いうコーナーがあります。

これは自由律俳句の二巨人・尾崎放哉(おざきほうさい)、種田山頭火(たねださんとうか)の名にちなんだコーナーで、リスナーから寄せられた自由律俳句を数句ピックアップし、有馬隼人さん、柴田理恵さん、そして伊集院光さんがその句に対して「あーでもない、こーでもない」という感想をいうものです。

形式もなくつづられる寸句がゆえに解釈も様々で、例えば「終点」という言葉から、柴田さんは小田急線の終点の江ノ島を連想すれば、伊集院さんは意外にも不倫の末路を想像するなど、その名の通り、自由なことば遊びの極みみたいなコーナーになっています。

「あらゆる選択を間違えてここにいる」by 煮え湯500杯 さん

 

「次の角を曲がったら話そう」by くらのすけ さん

 

上は番組に寄せられた句の一部です。どうでしょうか、どんな心理、状況、情景が思い浮かぶでしょうか?どちらも味わい深く、ポジティブにもネガティブにも、悲劇にも喜劇にも読める名句です。

さて、この平成30年の日本中から寄せられるさまざまな自由律俳句、その歴史の中でも非常に人気があるのがタイトルにもなっている放哉と山頭火です。どちらもググるとたくさんの作品をみることができます。

「咳をしてもひとり」 放哉

 

「まっすぐな道でさみしい」山頭火

 

 このあたりがやはり有名でしょうか。寂寥感や孤独のなかにどこか諧謔的な響きを感じてしまいます。

 

そんなこんなで自由律俳句に少しずつハマり、やはり二人の句を多く読んでみたいなとうっすらと感じていたところ、目に飛び込んできたのがコチラです。

 

 

「種田山頭火全集68作品⇒1冊』kindle版

しかも値段は99円!

 

秒速でポチってしまいました。

 

もちろん自由律俳句を目当てに買ったのですが、山頭火の随筆や日記がまた面白い。表現や文学について大上段に構えて論じることもあれば、乞食をして日本中を歩き回ってるので、「今日は焼酎もらえたラッキー」「ここのやつらは冷たい」「人々の優しさがしみるぜ」みたいなことが綴られています。
 
いまブロガーやインフルエンサーといわれる人々は自分をブランディングするのにあれこれと策をつくしていますが、まさにそれをやっている感じです。人生の切り売りというか、むきだしの生というか。
 

iPhoneSEにいれて手のひらサイズで読んでいます。長編の読書もいいですが、こうした寸句の中に凝縮された悲哀、孤独、季節、情景、こころにふと思いをめぐらせてみてはいかがでしょうか。

勢いあまって『伊集院光とらじおと放哉と山頭火と』にも投稿してみました。読まれたらまた報告したいと思います。

映画撮影用フィルム Cinestill 50Daylight(シネスチル) を使ってみた

ビックカメラや新宿ヨドバシフィルム館でみるたびに気になっていたタングステンフィルム『Cinestill 50Daylight』を初めて使ってみました。

 

メーカーのオススメ文句によると

 

映画のワンシーンを切り出したようなイメージで撮影できます。
映画用デーライトタイプのISO50カラーネガフィルム。
現像は一般的なカラーネガ現像 (C-41) できます。

 

とのこと。

なんとなくこう、青ずんだ、北野ブルー的な感じで撮れそうな気持ちにさせてくれる。ワクワクする文言です。

 

ですが、 ご存知の方も多いと思いますが、このフィルム、35㎜で36枚撮りがなんと1980円~もします!

 

た、高い…高すぎる!

 

というわけで、ふだんなら絶対手が出ない感じなのですが、なんと荻窪の「さくらや」さんで特売品1620円が、さらに見切り品(消費期限が近付いているフィルム)になって1200円(税込み)で売られていたのをGETできたので、ついに使ってみました!

 

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 (もうちょっと待ったら1000円切ったりするのだろうか)

 

下の写真は小向マーケットから多摩川大橋の近辺に行った時に撮ったものです。現像はビックカメラのフォトコーナーに特別な注文をせずに出してみて、ネガの取り込みもビックカメラ(フジカラーCD)でやってもらっていました。

 

kentarot.hatenablog.com

 

すべてカメラはLeica M4、レンズはSummarit 50mm f1.5で撮っています。クセ玉なので参考になるかはわかりませんが、以下作例です。

 

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彩度はあまり高くなく、落ち着いた色合いです。

 

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絞って撮ったもの。多摩川大橋の鉄骨の質感などはそれなりに出てるように見えます。

 

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川べりで遊ぶ少年たちを橋の上から。青の微妙なグラデーションはそれなりに豊かな発色に見えます。

 

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人肌はこんな感じです。(上に黄色い半透明の屋根があります) 

 

使ってみた感想としては、Summarit 50mm f1.5のようなオールドレンズと組み合わせると、ポワポワした画になりすぎて、ちょっと眠いかなーといった印象です。

この日は風が強く空気も澄んでいてビックリするくらいの晴天だったので、光量不足の心配はありませんでしたが、このフィルムはなにせiso50。天気によっては使えるシーンがだいぶ限られてしまうのでは?といったことも感じました。(夜用のiso800のタイプもあるので、また使ってみたいと思います)

映画っぽいとか、ドラマチックな絵になるといった印象も、正直なところあまりありませんでした。もう少し現代的なレンズと組み合わせて使ってみて比べられればと思います。また安く手に入れることができればですが。

 

 

ノエル・ビリングスリーさんリサイタル @アイゼナハホール

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ノエル・ビリングスリーさんの演奏会に行ってきました。こちらは昨年のスペインギターコンクールの優勝の副賞として開催されたものです。二日前には日本・スペインギター協会(下記)主催でスペイン大使館での演奏会もあったのですが、ちょっと仕事の都合で間に合わなそうなかったので、こちらにうかがうことにしました。

 

 

ノエルさんは大阪育ちで中学生からバンクーバーに留学。15歳からエレキギターを独学で始めたのちにクラシックギターに転向し、ロンドンのトリニティー・カレッジ・オブ・ミュージックで研鑽を積まれました。現在は奥様の出身地の沖縄に移住し、沖縄を中心に活動されています。

スペインギターコンクールの前年にはクラシカルギターコンクールでも優勝し、その前年には日本ギターコンクールにも優勝。まさに勢いに乗っているギタリストのひとりです。

ソロのフルコンサートを聞くのは初めてだったのですが、包容力のある音楽と骨太の音でとても心地よい演奏でした。技巧的な曲をバリバリ弾くタイプではなく、音楽の大きさで魅せるタイプの演奏家に感じられました。

特に印象的だったのがブリテンの「ノクターナル」の最後です。ギターを聞く人にはとても有名な曲で、第八変奏には「ドシラソファミ」という下降が執拗に繰り返され、緊張感が凝縮していくパッサカリアがあります。

こちらは処刑台での公開処刑をモチーフにしているといわれています。半ば狂気に満ちたテンションの高まりののちに死(断頭)がやってきて、ダウランドの「来たれ深き眠り(Come Heavy Sleep)」のテーマによる救済がもたらされるという美しいシーンです。

 

 (こんな歌です)

 

コンクールで若手のギタリストによってもよく弾かれるこの曲。多くの演奏家がこの第八変奏での息詰まる感じと、そののちのダウランドのテーマのとのコントラスト(生と死の対比)を際立だせる表現をしていて、それも非常にまっとうな解釈だと思います。

しかしノエルさんはここを非常に抑制のきいた、緊張させすぎない演奏していて、これが僕にはとても新鮮に感じられました。なんというか、生と死が対立するものではなく、死があくまで生の延長線上にあり、いわば日常の一部であるという表現に感じられたのです。

ご本人に確認したわけではないので、どういう解釈で演奏をしているのかはわかりません。ただ、20代、30代、40代…と死生観の変化が演奏の影響があるような気がして、年齢をある程度かさねた演奏者によるノクターナルをいろいろと聞いてみたくなりました。

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(演奏後にちょっとだけ撮らせてもらいました。Leica Q/Summilux 28mm f1.7)

打ち上げはホールそばの神保町の中華料理屋で。ギターの話から沖縄の話から、いろいろうかがって楽しかったです。こんど沖縄のFMで5分ほどの番組をやられるとのこと。東京でも聞けるんでしょうか。

 

プログラム
・第一部

A.タンスマン バルカローレ
J.ロドリーゴ ヘネラリーフェのほとり
F.タレガ   アルハンブラの思い出
E.グラナドス アンダルーサ
F.ソル    魔笛の主題による変奏曲
J.トゥリーナ セビリアーナ

・第二部
B.ブリテン  ノクターナル
M.テデスコ  タランテラ
G.サンス   パバーナ
I.アルベニス アストゥリアス

<アンコール>
ロンドンデリー・エア

 (アンコール曲はお父様の母国にちなんでのことでした。武満徹編ではないシンプルなアレンジがしみました)

 

来年3月にはノエルさんの演奏会を企画しています。こちらも楽しみ!

 

『戸田真琴×福島裕二 写真展』で圧倒されてきました

渋谷ギャラリールデコで開催されている「戸田真琴×福島裕二 写真展」に行ってきました。


結論から言うと、圧倒されました。


写真が好きな人、特にポートレートを撮る人は絶対に見に行った方がいいです。
そして圧倒されてください。

福島裕二さんとの出会い 

camp-fire.jp

福島裕二さんは活動歴27年、最近ではこちらのクラウドファンディングで、モデルの戸田真琴さんとコンビを組んで大成功をおさめられた写真家です。支援金をもとに今年1月に開催された写真展も大反響で、ちょうど見に行った友人が「感動した」と言っていたことから、どんな人かと関心を持ち始めました。(ちなみに支援総額5410000円はCamp-fireの「アート・写真」カテゴリで歴代3位、写真集を作るという趣旨では1位になっています)

写真集のモデルの戸田真琴さんは「まこりん」という愛称で呼ばれているAV女優さんで、映画にも造詣が深く、マルチに活躍されています。ジム・ジャームッシュの『ミステリートレイン』というメンフィスを舞台にした映画にインスパイアされ、かの地で写真を撮ってもらいたいとの彼女の願いにこたえたのが、デビュー当時から写真を撮っていらした福島さんでした。


撮影された写真は『戸田真琴写真集 The light always says』としてまとめられ、クラウドファンディングのリターンとして支援者のもとに届けられ、今は一般販売もされています。


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(左は福島さんが共著で参加されている写真テクニック本)

僕はこの第一回目のクラウドファンディングの存在は知らず、写真集を見るにとどまり、写真展の開催も知らなかったので、当時は実際の写真を拝見する機会を得るまでには至りませんでした。

しかしながら、何が出会いをもたらすかは分からないもので、僥倖とでもいうべき巡り合わせから、福島さんにお会いする機会がありました。そのおりに3時間以上にわたり写真論、ポートレートとは何か、などを多岐にわたってお話しくださり、その圧倒的な技術力と表現者としてのスタンス、そして写真にかけるパッションに打たれ、趣味として写真を撮っているものとしては、もう一気にその人物に惹きこまれていったのです。

 

そして今回の6月のアンコール展示のお話についてもうかがい、いよいよその日がやってきました。

 

 ギャラリールデコへ

 

出発前にTwitterを見ると、嬉しいことに福島さんが在廊してるとのこと。やった!というわけでえっちらおっちらと渋谷のルデコギャラリーにうかがいました。

 

渋谷のギャラリールデコはJR渋谷駅の新南口を出て徒歩1,2分のナイスロケーションのビルにあり、1階には写真学校が入っています。

ledeco.net

展示は4,5,6階を貸し切っての大規模のもので、ひとりの写真家がひとりのモデルのみでこれだけの規模で展示をやるというのは、かなり稀なのではないかと思います。(じっさい福島さんによると、東京でこれだけの展示が見られるのは類がないとのことでした)

4階で受付を済ませると福島さんがいらしたのでご挨拶。さっそく壁一面に貼られたおびただしい数のポートレートを見ました。

 

どれも表情が生き生きしていて、まこりんこと戸田真琴さんの目には信頼が宿り、仲の良いカップルの彼氏が彼女を撮ったようなポートレートだと最初は感じました。

僕も写真好きで、おそらく年に数十回は写真展を見に行っているので、勘のいいモデルさんと高い技術(コミュニケーション力も含む)をもった写真家の化学反応が、こういった写真を生み出すことは、わかっているつもりでした。

 

しかし、写真を次々と見ていくにつれて、そこには彼氏彼女のようなある種の危うさをはらんだものではなく、もっと大きな信頼というか、愛情のようなものが写っていることに気づきました。

モデルのまこりんも、レンズを見返すというよりは「身を委ねている」ようなたたずまいです。とにかくなんの壁もへだたりもない写真でした。

それは親が子供を見る時の愛情のようなものなのかもしれません。こちらのインタビューでも福島さんは「根底にあるのは人類愛」という言葉を口にされていました。

 

genkosha.pictures

 

4階を一周して「おれはいますごいものを見ている」と思いつつ、次はいよいよ5,6階です。4階ですでに衝撃を受けたことをお伝えすると、福島さんは「辛くなったら戻ってきていいよ」と言われました。

「辛くなったら?」と思いましたが、趣味であれ、写真を撮っている人間として打ちのめされるよ、という意味でした。

『戸田真琴写真集 The light always says』でアシスタントをつとめていらした「ゆりちゃ」こと大村祐里子さんもこんなふうにつぶやいてらっしゃいました。

 

 5階と6階で待っていたもの

そして階段をのぼって5、6階へ。

この上層が本当にすごい。

どう「すごい」のかは言葉で表すのは難しいです。

B0版(だいたい1.5メートル×1メートルだと思ってください)に引き延ばされたポートレート群です。

ぶわっと世界が広がる感じでした。

 

皺から、うぶ毛から、眉毛の剃り跡まで鮮明に見ることができます。

そして表情には4階の写真群と同じく信頼があふれ、撮り手の愛情が注がれているのが分かります。

 

そしてこのポートレートを見ていると、なんだかウルっときてしまうのです。

ポートレートを見てこんな感情がわいてくる経験が無かったので、本当にびっくりしました。

 

 

ポートレートでこんなことができるなんて! 

ただただ驚くばかりでした。

魂が震える経験というやつです。

幸いにも?次元が違いすぎて辛くなることはありませんでした。

「本当にすごいものをみてしまった」という喜びと興奮だけが残りました。

 福島さんは「人類愛」とおっしゃっていましたが、僕は戸田真琴というひとりの人間を通しての「人間賛歌」のように感じられました。なんだか書いてて恥ずかしくなってくるのですが、本当にそう思ってしまったのです。

 

福島さんからいろいろうかがったこと

4階に戻り、福島さんに味わった感動をそのままにお伝えし、写真についても出し惜しみなくお話ししていただけました。「出し惜しみなし」というのが福島さんのモットーとのことでした。なぜなら、いくら話を聞いたところで、マネできるものではないからということからでした。

 再現性のすごさに驚いたことについてもお伝えすると「こうきたら、こうなる。こうすれば、こうなる」というのがすべて見えている、ということをおっしゃっていました。プロとしては当たり前のことなのかもしれませんが、完ぺきなレシピと、洗練された技術に裏打ちされているのだということが、ヒシヒシと感じられてひたすら脱帽です。

 

ちょうど写真をやっている方がいていろいろ質問されていたので、いっしょにアドバイス的なお話もうかがわせていただきました。本当に丁寧にいろいろと話していただいたのですが、整理できていないので、覚えている範囲で書き記しておきます。

 

「思ったように撮れないのは、まずよく見ていない、見えていないから」

「表情の変化を予測しておく。モデルの表情がどう変化しても対応できるように」

「モデルの呼吸に自分の呼吸を合わせる」

「6つの目で同時にモデルを見られるように」

「とにかくどう撮るかということを考え続けることが大事」

「僕が写真で表現したいのは人類愛」

「本当にすごい写真を見たことが無い人が多いので、見る場、機会を増やしたい。そうすれば日本の写真のレベルはもっと上がる」

もう本当にいろいろとお話しいただいて多謝多謝です。ちょっとでも日ごろ写真を撮るときに活かせればと思います。

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日替わり写真集が販売されていたのでゲットしてサインもいただき、いっしょに写真も撮っていただきました!ありがとうございます!

『戸田真琴×福島裕二 写真展』は6/17までやっています!この機会をお見逃しなく!本当に見て欲しい写真展です!

 

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